先日のフィンランドの記事に関連して、参考文献にJGR論文がありました。かなり決定的な論文で、多くの人に見てもらいたいと思います。難しい記述もあって、私も少し小林先生にお聞きしました。
以下、私の質問と、先生の回答です。
わかる範囲で質問にお答えします。あなたのメールの中に書き込みます:
少し教えてください。先日のJGR Atmosphereの論文です。P.4の中ほどに、「0.7~2.0Hzパワースペクトル密度では、低周波数ほどエネルギー密度が高い」、とあります。これは音圧dbが高い、ということですか?
これはFig.2の説明と思われますが、Fig.2は4観測点の観測結果を示していますが、横軸は経過時間、縦軸は周波数、色分けはレベル(dB) です。スペクトルの色分けは、Fig.2右上部の凡例から判断すると、下方の青は28dB,情報の橙は60dBなので、Fi.g.2では周波数の低い、グラフの下半が橙っぽく、レベルが高いことが分かります
(2μパスカルを基準とするとあるので、普通の音圧のデシベルです)。大局的にそういえるけれど、時間経過を見ると、時の経過とともに、振幅も変動しているし、橙部分が強くなったり弱くなったりしているので、あなたの下記の文章に合致します。観測された現象の説明です。それとも卓越した周波数成分があって、上下に激しく振動している、ということですか?
それとも何か空気密度が高まるような、例えば息苦しくなるような、物理的な変化を指すのでしょうか?実際、わが家においても低周波測定を行うと、0~10Hzの音圧が高いことが分かります。この観測した現象のことでしょうか。そしてもう一つあります。P.5にある進行波の概念図です。上空を旅客機が飛んでいますが、1㎞より高いのであまり音は気になりません。
ところが100m上を飛ぶとものすごい騒音です。図1の概念図は差分による計算をしたとあります。条件の取り方にもよるのですが、吸収層?の設定により、ずいぶんな自由度があるように思います。要は2次元的な地表の広がりは、感覚的に思った以上に遠くまで広がるということなんでしょうが、この計算の出発点は観測点から計算しているんでしょうか。
実際の風力発電は高さが100mもありますから、地表での反射も含まれるようにも思います。あくまでも概念図、モデル計算例なんでしょうね。飛行機の音はあまり気にならないが、風車の低周波はつらいというのは、1つには飛行機からの距離が大きいこと、それから、上空で発せられた音が、地面近くの低速層=導波層(これが悪さをしているのだと筆者はいう)につかまることはありません。
ところが高々100mぐらいの風車から出る低周波音は、この低速層にしっかり捕まえられて、遠方まで伝わるのです。Parabolic methodという計算法はよく知りませんが(網目の各点の圧力を隣接した上下左右の点の圧力が何分の1かずつ伝えられるような計算をするのでしょう)、この概念図は論文にあったのではなく、私がインターネットで探した図だったかと思いますが、本来3次元的に広がる音波などの弱まりを計算する手法でしょう。
もし完全に一様な3次元空間だったら、音波は球面的が広がり、球面積に反比例して弱まるので 1/(4πr二乗):分母は球の表面積 となります。ついでに2次元的に広がる場合は円筒面の広がりに反比例して弱まるので 1/(2πr):分母は円筒の表面積(上面と下面は勘定に入れない)。ところが筆者が計算したいのは、3次元的な減衰ですが、全球面的に一様でないような3次元空間なので、工夫が必要です。
水平には全方向に一様だけれど、上下にはある程度広がるけれど、一部のエネルギーは戻ってくるような計算をしたいわけです。そこでそのような3次元空間のモデルを仮定するのですが、上空にエネルギーの吸収層を設けることによって、完全には反射してこないけれど、少しは戻ってくるような計算をするのでしょう。地表の反射は扱いが簡単です。
音源が地表にある時は、はじめから半球面だったとすれば、球面が広がるのと同じ式で扱えます。音源が上空にあるときは、地面を完全な反射面にして、上記のパラボラ法でも使って計算しなければならないでしょう。私は土木科を出て建設会社に勤めましたので、物理学雑誌は見たこともなかったのですが、JGR Atmosphere と、いう論文集? 雑誌? はアメリカでは有名なんでしょうか。
例えば「サイエンス」とか「TIME」とかよく聞いたり見たりしますが、そのようなわりと信用できる書籍なのでしょうか。JGRというのは正確にはJournal of Geophysical Research 地球物理研究雑誌 といい、世界で一番権威のある地球物理学の専門誌です。後についているAtmosphereは大気物理学部門の意味でしょうが、部門が何種類あるのかは知りません。
固体地球物理の論文はたくさん読んだことがありますが、自分で投稿したことはないので、出版社がどこかは知りません。
小林