ある科学者と話していて、7/26日付けの建設通信新聞の記事は酷いですよ、と内容を議論しました。
添付の記事を見て分かるように、真ん中辺に、「▽風車騒音は聞こえない超低周波音ではなく聞こえる騒音の問題」とあります。
私たちは、風力発電の低周波音被害に苦しんでいます。そりゃ、「うるさくてかなわん」と言って、耳に付いてどうしようもないという被害者もいます。でも根元は、低周波音被害です。有害な低周波音があるから苦しくて息ができなくなり、耳鳴りがして、頭痛がするのです。
以下に、先生の意見と、記事を添付します。是非、見比べてみてください。被害者を弾圧するスサマジイ加害者意識はどうでしよう。吐き気を催します。
「残留騒音」+5dBでは超低周波被害はなくならない!
建設通信新聞(2016年7月26日版)によると、環境省は16年度末をめどに風力発電施設の騒音評価目標の目安値をまとめようとしているという。
8月に報告書案に対する一般意見を募ったうえ、今秋に報告書をまとめる方針とのことだ。だが「評価目標」というのがわからない。「規制値」でも「基準値」でもないあいまいな「評価目標」をなぜ用いるのか?ネットでこの会議の議事録を見ると、http://www.env.go.jp/air/noise/wpg/conf_method/01_H28_02_siryo01.pdf 風力発電施設の設置事業者・製造事業者、行政、地域住民等に参考になるように、現時点までの知見及び風車騒音の評価方法について取りまとめたということだから、「環境基準」を提案するつもりなど元々なかったのだろう。
それはさておき、報告書の内容を見てみよう。
内容は同年2月の「風力発電施設に係る騒音対策技術等の検討に関する分科会の中間とりまとめ」とほとんど変わらない。検討会メンバーも上記分科会メンバーが数名加わっており、分科会と違った話になるはずもない。まず4つの基本的知見が挙げられている
:1)風車騒音は聞こえない超低周波音ではなく聞こえる騒音の問題である
;2)風車騒音の実測結果は、周辺住宅など影響を受ける場所の騒音レベル(A特性?)は26~50dBである
;3)発生音はスウィッシュ音(振幅変調音)として聞こえる
;4)これが、レベルは低いが耳につきやすくてわずらわしさ(アノイアンス)につながる場合がある。
この基本的知見の問題点を指摘しておきたい。
1)風力発電による被害の主因は聞こえる音ではなく、聞こえない超低周波音である
2)超低周波音が問題なのに、周波数も示さずにレベルだけ示しても無意味である
3)スウィッシュ音がわずらわしいのは事実だが、
4)それと同期して放射される超低周波音が人々を苦しめている主因であることが無視されている。
ここまで見ただけで、風力発電の超低周波音被害を防止する良策が提案されることは期待できないことがわかるが、せっかくだからもう少し先を見てみよう。
前記の基本的知見を踏まえて、風車騒音評価の目安値を「残留騒音からの増加量5dBに収まるように設定することにした」という結論が導かれる。
「残留騒音」とは、すべての騒音から音源の特定できる騒音を除いた騒音のことだから、いわゆる「暗騒音」のことである。したがって、ここにいう風車騒音評価の目安値とは、風車を運転しても、暗騒音+5dB以内にしたいということであろう。ただし、残留騒音が30dB以下のように著しく低い地域では「下限値」35dB、その他の地域では40dBを設けるという。
ということは、きわめて静かな地域では真の暗騒音レベル+5dBでは厳しすぎるので、とくに静寂を必要とする地域では暗騒音レベルより高い35dB+5dB、その他の地域では40dB+5dBでよいと言いたいのであろう。
その他、風車騒音の評価を行うのは、風力施設新設の場合だけとか、昼夜ごとに屋外で測定せよとかいい、またアセスメントは事業実施区域から1km以内でよいとかいろいろ言っているが、これらも被害の実態を完全に無視している。
なぜなら、(新設でない)既存の風力発電所周辺でも多くの超低周波音の被害が起こっており、低周波音は屋外よりも屋内のほうがつらく、また1㎞以遠でも重篤な低周波音病者が多数発生しているからである。
さらに、別の重要な問題点は、測定を「A特性音圧レベル」で行うことにしていることである。A特性は元来、人の聴覚を考慮した周波数重みづけだから、1000Hzあたりで感度が高く、聴覚の低下する低周波数では、200Hzで‐10dB(以下およその値)、100Hzで‐20dB、50Hzで‐30dB、25Hzで約40dBと周波数とともに急速に感度が低下している。市販のどの騒音計でも10~16Hzあたりまでしか特性が明記されていない。
したがって、風車による超低周波音によくみられる数Hzの超低周波音はA特性では全く計測できないか、測定精度が保証されないだろう。だから、風力発電による超低周波音の権威である英国の音響学者、レヴェンタール教授も「従来の典型的なA特性によるアノイアンス評価法は、低周波音ノイズには不十分であり、規制官署を誤った結論に導いた」と述べているのである
(Noise & Health,6-23,2004)。
風力発電等による低周波音被害者の訴えを真摯に聞けば、低周波音は肉体に直接作用しており、耳から聞こえる経路だけで感知されているのでないことは明らかである。
環境省は、かねてより批判の多い「超低周波音の影響を聴覚閾値を基準に考える立場」を放棄すべきである。