35年ほど前、香芝高架橋の低周波公害の時も、さまざまなドラマがありました。
私は土木科の学生でしたので、横河橋梁から来た先生たちから否定的な意見を聞いていたものでした。
沓脱たけ子議員が国会でこの問題を取り上げた名演説は、今も新鮮にそのまま通じます。それでも時間は「そのまま」なのです。
由良町では、低周波被害に苦しみながら7人の人が亡くなっています。風車に殺されたのです。由良町役場や議会は被害を否定して、笑い者にしています。
風力発電の低周波は、高架橋のモノとは発生メカニズムが違い、1Hz周辺の大変波長の長いものです。どこまでも遠くまで到達します。回り込みます。
風車から3km離れても、風車独特の低周波を観測することが出来ます。1Hz周辺で卓越した周波数がありますから、簡単な計測器があれば、誰にでも分かります。
冷蔵庫やクーラーの低周波は、30Hz以上です。電車やトラックは、一時的なもので、通り過ぎればなくなります。尖がったような波形が連続することはありません。
添付資料は私が計測したものですが、環境計量士の方が測定して、同じ結果を頂いています。
尖った被害成分が連続することにより、衝撃波となり、人々に被害を与えています。通常は、人の耳には聞こえないし、感じることもありません。
低周波被害者となり、苦しい、辛い、と感じた時から有害な低周波に苦しむことになります。
「聞き耳を立てる。耳をそばだてる」、きっかけはそのようなことだと汐見先生は証言しています。
以下、小林先生の見解です。
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私たちが香芝高架橋の低周波音を調査し、また奈良地裁の同じ問題の裁判に証人として立ったのは1981年頃、つまり今から35年も前のことなのですから記憶もあいまいです。
ただ調査や裁判についての記憶は(印象的なものにすぎませんが)いくらか残っているので、不完全であることを前提に思い出すままに少し述べてみます。
私たちは、被害者住民の訴えを信じて、それを立証する証拠を計測結果から得ようと努力していました。
高架橋が低周波音の発生源であるとの仮説を立証しようというのですから、当然、高架橋から次第に距離の離れた地点で計測を行い、低周波音圧が距離とともに次第に弱くなっていることを確かめることが出来ました。
これは予想通りでしたが、幾日間かの計測中、思いがけない幸運が訪れました。それは道路公団当局が、高架橋を補修するために組んだ足場が、夜間もそのまま放置されていたことです。
私たち調査班は、調査のため高架橋に届くような足場を組む予算もなかったので、それまではただ地上に立って、低周波音を計測していただけでしたが、その足場を利用すれば、高架橋本体に接触することも可能であり、私たちは高架橋本体に加速度計を1台設置することが出来たのです。
その結果、高架橋の振動波形と高架橋直下の低周波音の波形が全く相似である記録を得ることができました。この実測記録が、裁判を事実上の勝訴に導いたと思っています。
それまでの道路公団の主張は、低周波音なんてどこにでもある。風が吹けば発生するし、大型トラックが走れば、空気を押しのけて走るのだから当然低周波音も出るだろう。
家庭のエアコンや冷蔵庫だって低周波音を発生している。
なぜ道路公団の高架橋がその責任を取らなければならないのか?というものでしたから(この言い逃れは、現在の風力発電擁護者らの言い分となんと似ていることでしょう)高架橋の振動波形が、問題の低周波音の波形と完全に相似であり、高架橋の振動こそが低周波音の原因であることが疑いの余地なく立証されてしまったのです。
裁判のことも1つ触れておきます。
被告(日本道路公団)側の専門家の証人は、低周波音の世界的権威を言われる某理研の某博士でしたが、上に紹介したような、道路公団の主張、低周波などはどこにでもある云々を主張するだけでしたから、われわれの実証的証拠の前にはひとたまりもありませんでした(これも環境省の庇護下にある一部の日本騒音制御工学会の専門家と酷似しています)。
低周波音公害をめぐる状況は、現在も35年前と本質的に変わっていません。
しかし事実の前に「低周波音は聞こえないから有害であるはずがない」(つまり被害者の訴える悩みは嘘だ)という謬論がいつまでも生き残れるはずはないと私は確信しています。
2号機、 風力発電の近傍で測定したデータ
我家の居間で測定したデータ