紀州のドン・ファン

貧乏な和歌山の田舎町にも、こんな話題がありまして、カネ儲けには何か魔物が付くようだと世間話にしている。たまたま知人が田辺市の近所に住んでいて、彼を何度も見かけたそうだ。遠くからでもオーラが出ていて、「うわっ」という気持ちになったと言っていた。神がかり、みたいなのがあったんだろう。

私は百姓の生まれなので、とくに金に執着は少ないと思っている。人並みに貧乏暮らしを嘆いているけれど、この人のマネをできるか、となると、それぞれに人生があっていいんじゃないかと答えるだろう。彼の書いた本には、特に変わった記述はなかった。

書くことのできない事件もあっただろうけれど、それだけで人生を本にして売り出す気持ちになっただろうか。私も『風力発電の被害』を書いている。どうしても書かなければならなかったからだ。たとえ彼がゴーストライターを使ったとしても、彼には何か書いて残しておきたい理由があった、と考えるのだ。