汐見医師による公害風車問題の発表提議

長く、公害病の被害実態を調査・追及されている和歌山市医師会 汐見医師が由良町風車問題を和歌山県医報で発表されておりますので、抜粋させていただきます。

平成25年4月10日発行 

和歌山県医報 第700号

外因性疾患論考

 和歌山市医師会

汐 見 文 隆 

― 疾患には外因性と内因性とがある ― 

 外因性疾患とは原因が体外にある。内因性疾患とは原因が体内にある。外因性疾患に対してはその外因を発見してそれに対応しなければ治癒させることができない。

 これが臨床医学の出発点であることを強く印象づけられました。しかし医療が進歩したと誰もが信じている半世紀以上経った現在、果たしてそうなのかと言う疑間を拭うことはできません。

 それは公害病に対する対応に明らかです。公害病の代表として水俣病を取ってみれば、これもすでに半世紀以上経っているのにまだ患者の認定が結論を迎えていません。

その理由として、3つが考えられます。 

 それは2年前の福島県の原発事故で、我々の前にはっきりと姿を現しました。

1.科学の発展が必ずしも人類の幸福につながるものではない。

2.理工学関係の学者の多くが、国民の幸福よりも自分の名誉や幸福を主にしているのではないか。

3.公務員(特に上級の国家公務員)の多くは天下り後の自分の幸福を優先して国民の幸福は念頭にない。 

 これがこの国の主体的な現状である。このままで経過して、我々日本国民が幸福な未来を迎えるとは思えない。どうしてこんな情けない状況になってしまったのか。

 そこにあるものはカネとエゴ。それがこの国を覆って、アベノミクスなどという上っ面の対策ではごまかせない深刻な危機を迎えていると覚悟せざるを得ません。 

 そこで医師が出る番になるわけだが、この国の医学の世界でもカネとエゴがうごめく現状で、医師に対応を期待できるのだろうか。今こそ医師は国を救う決意をせねばならない。それには国民を苦しめている現状をはっきりと見定めなければなりません。 

 和歌山県は高野山から熊野に掛けて世界遺産になっており、その山上に発電のための風車を一列縦隊に並べる訳にはいきません。そこで世界遺産に関係しない人口の少ない地域が候補地に選ばれる。それが景色だけの問題ならよいが、風車の稼働時には近くの住民に頭痛・不眠・イライラ・耳鳴り等々の不定愁訴を来し、風が吹く限りは風車は稼働しますから、住民は我が家に住むことが困難になります。 

 それが今和歌山県民を襲ってます。その風車の近くに住む人達の深刻な苦しみは伝えられてきますが、由良町は町長以下住民達の被害の訴えを相手にしないだけでなく、自然エネルギーの望ましい利用として、仁坂知事以下増設に賛成であると伝えられます。

 この外因性疾患に対して、地域の医師を受診しても疾患として認めてくれないのです。 

 作動中には2ヘルツ付近に超低周波音が証明され、停止中より明らかに高値を示しているのに測定は無視されています。そして風車に近い我が家では苦しいのに遠くに行けばどうもないという外因性の疾患の特徴が明らかであるのに、相手にされないのです。 

 私が経験した風車被害では、愛知県田原市でも、愛媛県佐田岬半島でも、東伊豆でも、被害とともに2ヘルツの超低周波音の高値が証明され、人工的な音源であることは明白ですが、まだ国は認めようとしません。官僚や関連業者や支援学者のカネとエゴが横行しているとしか理由は考えられません。 

 この国のこうした惨状を打ち破るものは、医師の役割以外ありません。ところがこの国の現状はどうでしょうか。

 3時間待って3分間と言われる医療現場の多忙と混雑、高度の検査の進歩による間診の軽視が、その期待を裏切っているのです。医学の領域の強い反省なくして、国民の幸福、人類の幸福は期待できないでしょう。