低周波の減衰に関する講座

2016.2/12日のブログに記載した俗説批判について、数式とグラフが難しいので、思い切って質問しました。
というのも、音源の風力発電はブレードの長さが40mもあります。ブレードの幅も2mはあるでしょう。風車の直径は80mの巨大なものです。
タワーの高さは100mもある。

冷蔵庫などは、せいぜい1メートル程度です。音圧も、音源も、規模が違う。
具体的な数値を入れて、現象を再現できることを示せないでしょうか。と。
科学者はこう説明しました。

「低周波はどこにでもある」説を、どう考えたらよいのか、それを理解するための1つの理屈です。
源の規模(エネルギー)の大きさが違うからだというのが1つに理由であるということまでわかった段階です。

それとは別の理由もありそうで、低周波は波長が長いと、音波は容易に回折する(回り込む)ので、それもあるのではないかと想像しています。
波長の短い音はあまり回折しない(回り込まない、あるいは直進する)ので、少し陰になると、もう伝わってこないのに、低周波音は、源が見えなくても回り込んでくるというのが大きいように思います。

同じ低周波でも、冷蔵庫程度ではそんなに低周波ではなく、風力から出るのは超低周波で、波長がずっと長いのでその辺が違うのではないかと思います。
これも次の段階で調べてみたいと思っています。

とりあえず、r0=1mとr0=50mの場合について前と同じやり方で計算をしてみました。
もっと大きいサイズの源でも計算できますが、小さい源との差が大きくなるだけです。
「距離:dB」で図示したのは、縦軸が生の数字では感じが出ないのでdBに変換しました。

距離を源のサイズだけ右に水平にずらしてプロットすべきですが、やり方がまだわからないので、ずらしてありません。
ただし、ずらしたところで図の様子はあまり変わらないでしょう。源の強さをいくらにしたらよいかわからないので、今は単純に計算しただけではdB値が小さすぎるので、任意の60dBというげたをはかせてあります。

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60dBには何の根拠もありません。距離減衰は図を拡大してみればよくわかりますが、倍距離で6dB減衰しています。

さらに質問です。私は以前、風車の下で低周波測定機NA-18Aで計って、我家でも測りました。
風車の下では1Hz,2Hz周辺は70~75dbでした。我家では、50~60dbでした。我家は風車から1.2㎞の距離です。我家からは風車は見えません。
先生のグラフの減り方の方が大きいのです。

また、由良風力発電所2.000kw、5基の真正面の1.0㎞の所では、90dbの時もあり、ほとんど減衰していません。一番被害が起きている地域です。あの時、夕方に訪れた地点です。
理論的には、音源が大きいと、低周波音の減り方は少ない。でも現実には、減り方は、もっと少ない、でよろしいでしょうか。

科学者はこう語った。

またまた難問ですねえ。何でもわかるわけではありませんが、そういう実際的体験を聞かせてもらうのは、いろいろ考えるヒントになるので有益です。

1)いま一応考えられることは、前便までの計算は「点源」を仮定した計算ですから、波面が1/(4πr2)に比例して小さくなっています(球面波)。
dBでいえば、-10 log(4πr2)なので、倍距離‐6dBの減衰になります。r=1の場合とr=2の場合の値を比べればいいわけです。
昨日のメールでその計算を示しました。

念のため、簡単な試算を示しておきます:距離1における音 のエネルギーを E1 と書くことにすると、そのデシベルは dB(1)=10 log E1 ですが、それが2倍の距離まで伝わると dB(2)=10 log E2
= 10 log E1x(1/2)^2 = 10 logE1+10 log (1/4) = 10 log E1 – 10 log 4 = 10 log E1 – 20 log 2 となり、log 2=0.3010 ですから、第2項は約6となり、音響学の常識通り、2倍距離6dBの減衰を示しています。

2)同程度の出力の風車が複数台並んでいて、いずれも同程度の強さの低周波音を発生しているとしたら、それらを大きく取り巻くような「まゆ形」の波面が出来るでしょう。その中央部付近を見る限り、波面はあたかも円筒の径がだんだんきくなるような広がり方をしているでしょう(円筒波)。その場合、波面の表面積は1/(2πr)に比例して小さくなるので、dBでいえば、-10 log(2πr) なので、倍距離‐3dBの減衰になります。

3)最後に考えるべきは、源の内部はどういう音場かということです。低周波音がを作られている直近距離では、低周波音の発生メカニズムにもよるでしょうが、 おおざっぱなことをいえば、ただ音エネルギーが全体として高いと考えられます。すると、源の内部では一様にある高い値になっていて、距離減衰のようなことは考える必要はありません。(ついでながら、「平面波」の場合も距離減衰が起こりません。ただある強さの波面が面に直行する方向に平行移動しているだけで、波面の面積は広がらないので、幾何学的減衰はおこりません。)

4)以上を理念的につなぐと、ある大きさの音源域内部では音は減衰しないー>すこし離れると、音源域がまゆ形の円筒に見えてくるので(円筒波)、倍距離‐3dBの減衰をするー>さらに離れると音源域が点に見えてくるので(球面波)、倍距離‐6dBの減衰をする。

減衰しなかったり、減衰したりするのが、上のような考えのどのような場所に当たるのか、それで解釈できるのか、出来ないのか検討してみてください。