革新的なイノベーション、って何ですか?

久しぶりに小林先生に何度か質問してみました。小林先生は東京の鉄道研究所にもおられたらしく、そこから派遣された先生方に私は学生時代に教えられていたものでした。ですから「日本列島は生きて活動している」みたいな話になると、アッ、同じ考えの学者さんたちなんだと懐かしくなる。質問の趣旨は、今、政府が言う「革新的なイノベーションが重要だ」という意味は何だ? という疑問です。

エネルギー転換で、CO₂をゼロ0にするとか、変な話です。まさか「水は燃えるんです」みたいなアホは言わないと思いますが、詰まる所、どういう変革を目指して実現するのか、です。実は30年前、委託業務で風力発電の実態調査に関係したことがあります。全国で、すべて失敗でした。風なんか吹いていなかったんですよ。

維持管理が面倒で、故障して、放置されて、撤去されて、それでおしまいでした。武田恵世氏の言う「不都合な真実」より先に、私たちには、コンサル関係者には、風力の実力が分かっていました。電気仕掛けで風車を回わしていました。それは今現在も同じで、ジャーナリストなどもそう言っています。また、私は技術開発部にもいました。

革新的なイノベーションなんか、どこにもないんですよ。理想と現実の区別が必要だろうと思うのです。ヒトラーのヨーロッパ制覇、アジアの八紘一宇、嘘ばっかりでしょ。だとしたら、政府は、まったくホラ話を国民に強制して吹いていることになる。この論理は間違っていないと思いますが、どうでしょう。今、各地の風力反対運動が溶け始めています。ボロクソに潰れています。

風力被害を直接見て、理解している人もいるでしょうから、大変な有様になっています。やはり私は、あちこちから嫌悪されています。汐見先生もそうでした。迫害、というより、真実を追求されたら困るんでしょう。風力発電はダメなのは30年前から分かっていたのです。いくら技術が進歩しても、風は吹かない。

以下、小林先生からのお話です。

政府がいう「革新的なイノベーションが重要だ」というは、エネルギー転換で、「CO₂をゼロ0にするには」という目的を達するにはという文脈においてでしょう。そして、具体的には、風力、太陽電池はもちろん、原子力発電に相当大きな期待を抱いているのではないかと思います。

化石燃料を燃やすことにより、地球温暖化が起こっていることは確かで、そして地球温暖化により、低い島や湾岸が海面下になる可能性も確かにあり、できれば避けたい。しかし、前に挙げた2つの発電方法は、住人に損害を与えなければ、確かにCO2は出さないし、その目的にかなうでしょう。

でもおっしゃるように、いい風がどこでも吹いているわけではないし、また、太陽はどこにも照るけれど、広い土地が必要で、その目星がつているわけでもありません。具体的に、日本の全電力を賄うには無理があるでしょう。

ところが、一度話したことがあるかも知れないけれど、宮城教育大の草野清信さんは、南鳥島全島に太陽パネルを敷きならべ、水を電気分解して水素を作り、それを液化して本土の運ぶ。本土では水素をを燃やして、電気を作る。

液化水をを運んで来たタンカーに真水を積んで、南鳥島に戻す(南鳥島には周りに海水があるけれど十分な量の真水がない)という壮大な構想を提起しています。確かに、このやり方なら日本の全電力を太陽発電でまかなえるのですが、いま日本政府は、この提起のことは知らないだろうし、CO2を出さない発電法として、原子力発電を考えているのではないかと思います。

ところが3.11の東日本大地震による福島原発の事故以来、国民の大多数は、原発の致命的な欠陥を知ってしまった。原発はCO2は出さないけれど、どうしようもない放射性廃棄物を生産します。この放射能は、ウラン鉱石のレベルまで下がるのに1万年ぐらいかかるという厄介なものです。

だから、原発は、いまでは日本のどこに作ろうとしても、反対がが強くて作れないし、廃棄物を引き受けるところもない。いまも全原発は止まったままではないですか?原発事業者はだから今は技術輸出にかけています。そんな技術に期待できるでしょうか?

とすると、草野氏のアイデアぐらいしかないではないか?もっと小規模ならバイオマス発電もあるけれど…。(これは現生の植物を燃やす方法だから、化石燃料をもやすのとちがって、地球上のCO2を増やさない。でも、これでは日本の電力には足りないでしょう。

小林 芳正