高速道路の低周波音公害を覚えていますか ?

今から35年ほど前のことです。
北陸道の金沢市付近や、西名阪自動車道の香芝町付近で、高架橋が原因の低周波音被害が公害としてニュースになったことがありました。
全国的にも大規模な鋼桁橋が建設されて、同じような被害報告がありました。

私は大学の土木科にいたので、設計演習として、橋梁の設計書を担当教官に提出したりしていました。
当時は経済設計ということで、出来るだけ軽量にして、コンクリート床版の強度も組み込んだ合成桁橋が流行でした。
後日問題となる振動や疲労破壊は、あまり考えなかったと思います。

その時に、噂話として、中空のボックス桁、鋼桁橋が車の走行で振動して低周波を発生させて周辺住民から苦情がたくさん出ているそうだ、みたいなことを聞いていました。
ジョイント部の衝撃が振動させているとも言われていました。

この件には汐見文隆医師や武田眞太郎先生も参加していました。
低周波音被害の対策として、隔壁や補強リブを設置したり、大量のコンクリートで固めたり、防音壁で覆うようにしたり、ジョイント部の改良を重ねたり、これでもか、というほど剛性を高めて振動を抑えました。

かなりな工事を行っていました。それで、今回のモデル検討です。
私の書いた下記の図面を見てください。久しぶりに三角定規を手にしました。

橋梁と風力発電とは、ほとんど同じ構造系をしています。鉄パイプが横になっているか、縦になっているか、だけの違いです。
橋梁の場合は、厚いコンクリート床版と一体となっています。隔壁や補強リブなどで振動が抑えられるように対策しています。

風力発電の場合は、まるで何の対策もしていません。風が吹いていなくとも内部の電気機器で鉄パイプのタワーが振動します。

ブレードが回ると、タワーとの間で空気が圧縮する瞬間に荷重が掛かります。もちろん空気振動が発生して遠くまで伝播します。
ナセルの荷重が重く、常に頭を揺らしていることになります。構造全体で複雑な振動をしています。

タワーの高さ100m、風車の直径が80mの巨大なものです。由良町の場合、隣の風車との間隔が200mほどですから、互いに影響し合っているでしょう。
風車が21基も並んでいますから、点ではなく、面的に低周波音を発生させて真下の被害地域を襲っているはずです。

町長答弁では、毎回、健康に影響を与える低周波は発生していない。としていますが、この高架橋の被害例を見れば、いかにウソと欺瞞に満ちた政策を進めているかが分かります。

この件に関する研究論文はたくさんありますが、仮に一つ提示しておきます。『西名阪自動車道、香芝高架橋問題科学調査団』の報告書は白眉です。
インターネットで公開されています。

また、あの三井造船が低周波音対策をしている研究成果も示します。なんや、風力発電を施工している三井さんも知っていたんや。
私は、地域の人が風力発電で被害を受けて苦しんでいるのに、科学的な知見とか言って、何の思いやりも見せない町政に対して、邪悪なものを感じます。

社会は、いろんな約束事で成り立っていますが、このような嘘がまかり通れば、あらゆる秩序が音を立てて崩れ去ると考えます。
何が大切なのか、人として尊重されることでしょう。ウソは許されません。

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高速道路橋から発生する低周波音、論文-001
高速道路橋から発生する低周波音、論文-002
高速道路橋から発生する低周波音、論文-003
高速道路橋から発生する低周波音、論文-004
高速道路橋から発生する低周波音、論文-005
高速道路橋から発生する低周波音、論文-006