人々の心は簡単に破壊されていた。

人の心を操る方法として、大学の心理学教室で毎年行われている実験の様子を何度か紹介した。それは罪のない、まるで子供だましのような授業の一環だった。一方、『服従の心理』ミルグラム著によると、たとえ被害者が苦しんでいようと、被験者は笑いながら実験を進めたという。

サイコパスという特殊な人が一定の割合で存在しているとする。しかし社会全体が、由良町のように被害者を否定して弾圧するようになると、特別な、とか、たまたま、とかいう問題ではなくなる。そうなるように仕向ける必然の仕組みがある。前ページでは、風力発電の被害とは、卓越した低周波と、それを否定する社会の弾圧だと書いた。

h24年の当初から、汚い地域対策のおかげで、とうとうここまでのめり込むことになっていた。支えてくれる人もいたから、いつも書くように全く一人ではなかったわけだが、基本は私一人の孤独な作業であった。何より信頼していた被害者たちの心変わりと裏切りが、とても許せるものではなかった。

それらの人は、とうに死んでしまったり、それなりの地獄に生きているから、自業自得だと思っている。私も地獄めぐりしているからね。私は、いわゆるおばあちゃん子で、家庭の事情からとても可愛がられた。その祖母が国防婦人会の会長さんだったので、戦時中の話をよく聞かされた。

由良港は軍港で、グラマンが襲ってきて百人ほどの死者を出した。菰(こも)に包んで、開山興国寺の広場に積み上げたという。鍛冶屋谷の我家の蜜柑畑の下には三昧(火葬場)があって、ドッチボールのような白い丸いものがいくつも竹やぶに転がっているのを見たことがある。あちこちの焼き場に分散して火葬されたという。

たぶん今もそのまま残されているだろう。住民のものではない。兵隊さんの残骸だ。あの戦争では、最後のその時まで、誰も戦争を止めよう、なんて人はいなかった。それどころか、竹槍もって抗戦するつもりでいたのだ。爆弾抱えて自爆する特攻が流行っていた。6千人ほどの若者がそれで亡くなったという。

国策だ。人々はそれを賛美して靖国神社だと言っている。我家の大叔父たちは、「あんな戦争で死ねるかよ」と吐き捨てた。祖母の実家の楠正成の子孫たちだよ。国策の何たるアホらしさよな。今、それらを見渡すと、日本は国際政治に翻弄されて、いいように叩きのめされた。12歳の少年だ、と結論されて終わりだよ。

原爆も二回落とされたしな。もし三回目があるとしたら、やはり日本になるんだろうか。次は東京が目標になるような気がする。たとえ日本が原発を持ったとしてもそれは変わらない。国際政治の現実だ。歴史家トウィンビーが予言したように、日本はアジアに回帰するんだろうか。日本は、いかにも田舎者になっている。自己破壊しているのだ。

海外では、アメリカでもヨーロッパでも、「Stop wind turbine!」(風車を止めろ)と言って抗議している。健康被害がある、と言っている。しかし日本の自称、反対運動はどうだろうか。そんな言葉はどこにもない。「土砂崩れが~」と言ってはゲラゲラと笑うのだ。テレビの時代劇『遠山の金さん』でやっていた悪党たちの罵声と同じよ。

最近はテレビで勧善懲悪の時代劇がない。チャンバラ映画と笑うけれど、悪党は殺され、善人は幸せに暮らす。こんな当たり前な理想が、今の日本ではタブーにされている。被害を訴えるものは精神疾患だ」風力発電の被害調査報告書で、国の報告書がよくもこんな言葉を書き記すな。「低周波被害には基準も何もないんだよ」警察や検事はそう嘲笑った。

違うだろう。被害の基準は被害者にある。水俣でもイタイイタイ病でもな。新聞やテレビと言ったメディアは、所詮プロパガンダの道具でしかなかった。アメリカでもそうなっている。昔、かつてモスクワ放送が面白かったでしょ。あの異様なソ連のプロパガンダは何だったんでしょうな。人々に進歩はないような気がする。

それどころか、動物は家畜にすると脳が小型になって従順になる、という。人間の脳も小さくなっているんでしょ。管理しやすいように、奴隷にされている、と私は思っている。風力発電の被害地域のハイになった人々を見ると、私は裸足で逃げ出したくなる。ヘンなオーラを纏っているのだ。

「私たちは風力発電には反対ではありません」とか、「風力の被害など聞いたこともない」とかさ。キャァー、悪いもの見てしまった。吐き気がする。嫌な連中よ。ところが彼らはそれが面白くてならないのだ。畑地区の人と一緒になって頑張っていく、と言っていたからね。魔法、集団催眠、全体主義、北朝鮮よりすごい現実を見る。

退屈に見える日本社会も、なかなか、やるじゃないか。伊豆や伊方など、各地の風力被害地は完璧に出来上がっている。少し抗議の声を出したばかりに消されてしまった被害者たちよ。本当にご苦労さんでした。笑いものにされて迫害されて苦しんでいたことはよく分かっている。

ほとんどの人はそれが楽しみになって面白かったんだよ。次の被害者をヒツジにしようと、スケープゴードが繰り返される。