イプセン『民衆の敵』を読んだ。

以前、水俣病の日吉フミコさんの本を読んでいて、私のことが書いてあるやないか、なんや私以外にも同じことを考えて行動した人がいてたんや、と感動したことがありました。私にはすぐに同調して、その人の物語にのめりこんでいく癖があるみたいです。映画を見ていても、悲しい場面が盛り上がると、つい涙が出てしまいます。感動しやすいんでしょうな。

『民衆の敵』も、読んでいて、あっ、と驚きましたよ。主人公のトマス・ストックマンは言うことも、動きも感情も、周囲との軋轢も批判も、その数々の言葉も、全く私が体験してきたそのままのドラマでした。もう100年以上も前に書かれた、それも北欧のノルウェイの物語です。さすがに世界の名著だけあって洗練された構成になっています。とてもよくできている。

実は、私の書いた『風力発電の被害』と内容が同じなのです。私はストックマン医師だったのです。そして私は民衆の敵を演じてきたというわけです。「自分の心を汚しては生きていけないってことだ」と彼は言う。私は今もそう思っているし、他人から見れば、なんと思い込みの激しいヘンな人よ、と軽蔑されるだろう。

しかし「民衆の敵」は、絶妙に組み立てられている。私もその中で、難儀しながら生きている一人だ。今、インターネットで「風力発電、被害者」と検索すると、私一人が巨大な悪の組織に立ち向かっていることが分かると思う。孤立した悲壮感よ。誰も近寄らないし、風力発電被害に抗議する人は、他に誰もいない。

海外には風力発電の被害に抗議する人はドツサリいることはこれまで紹介してきた。なぜ日本には私一人で、他の人は何も言わないのか、被害を否定して笑っているのかと書いてきた。その答えらしきものがこの本に書いてあった。エンターテイメントかコメディかとも解説している。とんでもない。私はこれまで真剣に戦ってきたし、泣きながら掴みかかってきた人たちもいた。

その人たちは今は歴史から消されている。風力発電の被害、だけではなく、今回の私をあざ笑う人にも、ぜひ、この本を読んでみてほしい。私のことがストレートに書いてある。200ページの簡単な物語だから、1時間もあれば、十分に熟読できる。ただこの本は、読む人を選ぶかもしれないから、その点は了解しておいたほうがよいでしょう。